ゲームオブスローンズの世界を楽しむための解説

ジョン・スノウ、デナーリス・ターガリエン、ティリオン・ラニスター、サーセイ・ラニスター、ジェイミー・ラニスター。シーズン1から最終シーズンまでの主要人物である5人に関する伏線についての考察。壁の北の戦い、ウェスタロスの鉄の玉座を巡る戦争、デナーリスの玉座奪還の3つの軸のつながりについて。伏線を楽しむための解説。

カテゴリ: シーズン2

①マージェリー、再び王妃に

レンリーの死によって王妃の道は絶たれていたが、再び表舞台に登場した。

②リトルフィンガー、サンサを故郷へ帰す?

窮地に立たされたサンサはリトルフィンガーが心強くみえただろう。自分が成り上がることに執着しているリトルフィンガーはサンサのことも出世のために利用するのか?

③スタニス、火の中に何を見た?

ロードオブライトに仕える者が、そうでない者に火を見せる。この構図はシーズン7でも登場する。

④ヴァリスがティリオンという男をどう見ているかがわかる言葉

「あなたの貢献を理解するものは大勢います。何も与えられず歴史にも残らないでしょうが、私たちは忘れません」

王ではなく国に仕える者と、自らを称するヴァリス以上にティリオンの功績を理解しているひとはいないのかもしれない。味方になりたいのだが、「国」のためには味方になるわけにはいかない…シェイを連れてくるということだけが唯一にして最大の感謝の意なのかもしれない。ヴァリスという人間の深さを知れるシーンである。

⑤ヴァラー・モルグリス

「顔のない男」とは何か、少し明らかになった。ジャクエンが一瞬で顔を変えたのが印象的なシーンである。強さよりも、まずは家族を求めたアリア。ジャクエンと再会することはできるか?そしてコインをブレーヴォス人に見せるとどうなるのか?ヴァラー・モルグリスとはどういう意味か?ジャクエンの再登場に期待したい。

⑥クォリン

第8話で「相手を信じさせるために必要なことをすればいい」とジョンに話した。クォリンは自らの命と引き換えに、ジョンに野人からの信頼を与えた。

⑦ザロの金庫の中身の真相

ことあるごとに、ザロは金庫によって自分の財力を主張し交渉に使ってきた。


<インサイド・ストーリーより>

デナーリスは大きく変わったと思う。この第2章の最後の数話で。これまでずっと、彼女は他人に助けを求めてきた。だが最後に自力で進むしかないと悟る。玉座は他人の助けで取り戻すものでなく、自分で奪取するのだと。他人は頼れないと気づく。

彼女は王位を継承する立場にない。七王国を手にするには征服するしかない。彼女はその意味を悟る。以前、カールドロゴに征服を頼んでいた時は、意味を理解してなかったと思う。だが今やそれが戦争を意味すると知り、破壊と殺戮でのみ達成できると彼女は理解する。本章の最後でターガリエンの末裔、そしてドラゴンの母として自立する。

戦でのティリオンの働きを知らない者の方が多い。彼は「王の手」を解任され城の外れの陰気な部屋で、大怪我をした体で床に伏せている。意識を失っている間に彼の立場は一変し、地位は急落した。しかも悪いことに彼を看病しているのは、先日、ティリオン自ら投獄した男だ。事態が一気に悪化した。ティリオンのおかげで王都は陥落を免れたのに、褒章を受けるどころか罰せられる。

本作はファンタジーで現実にない要素が出現する。登場人物たちはそれらの要素に対し、リアルな反応をする。現実世界に魔法が現れたら恐らく我々も、似たような反応をするだろう。そして魔法は辺境からやって来る。メリサンドルの出身地である極東やデナーリスのいる地やそして北部、ホワイト・ウォーカーの不死者の軍団だ。それらが世界の中心に向かうが、中心の人々はまだ何も知らない。視聴者だけがそれに気づいている。ホワイト・ウォーカーは全員にとって脅威であり、今後、皆が直面するが登場人物たちは誰も認めない。第2章の締めとして最高にふさわしい。視聴者はこれでうかがい知る。冬が来たれば、ウェスタロスの人々に何が起こるか。

①ワイルドファイア恐るべし

シーズン2の第5話でティリオンが知ることになった鬼火(ワイルドファイア)を見事に作戦に活かしきった。船に火のついた矢を命中させたブロンの功績は大きい。

②ポドリック、ティリオンを救う。

ティリオンの窮地を槍のひと突きでポドリックは救う。このことにより、ティリオンのポドリックに対する信頼は確固たるものとなる。

ジョンがモーモント総帥をワイトから救ったのと同様に、またダヴォスがスタニスの食料危機を救ったのと同様にに、部下が上司を救うことで確固たる信頼が生まれるというケースがよく登場する。

③ハウンドとスターク家

兄マウンテンに負わされた顔の火傷が、ハウンドという人間の生き方を決める上でどれだけ重要になっているのかということが、今回の戦で鮮明になった。ハウンドと火。この関係は今後の話でも触れていくテーマだ。

サンサはハウンドについていくことはなかったが、スターク家との関わりは今後も続く。城を去ったあとのハウンドの生き方に注目したい。

<インサイド・ストーリーより>

ブロンとハウンドは性格が正反対だ。ブロンは、一緒にいて楽しいタイプ。片やハウンドは、大抵の人に対して無口。でも中身はよく似ている。2人とも何度も戦場で戦ってきた。死と直面してきたがどちらもそれを恐れない。他人からどう思われるかも気にしない。

2人が対立するのは彼らのボスが違うからだ。シーンの最後に2人は一緒に飲む。ただ単に2人が同じ側で戦うというだけでなく根本的には同類だと指し示している。

もうティリオンは自分が行くしかない。兵を指揮できるのは彼だけ。ティリオンは戦士ではないが勇敢だ。恐怖を感じた上の行動だから一層勇敢である。ティリオン役のピーターが微妙な変更をする。台本とは違うが、実に秀逸だ。同じことを2度言うが、1度目は小声でつぶやく。「俺が率いる」自分の下した決断に衝撃を受けた表情をする。そしてまた言う。「俺が指揮官だ」。本人も自分の行動に驚いたかどうか難しい問題だが、この演技のおかげで驚いたというのがわかる。

今シーズンのティリオンに、もう身勝手さは見られない。リーダー、政治家、参議として最善を尽くそうとする。アクション派ではない。でも勇敢だし、きちんとわきまえている。リーダーは前進して戦わねばならないと。

サーセイは苦労続きだ酒飲みの夫が死んで以降、彼女自身が酒に溺れ始めた。苦境の彼女を慰めてくれるのは、ティリオンを苦しめること以外は酒だけだ。ティリオンの作戦を彼女は知らない。大軍が町に押し寄せ、為す術を知らない。負ければそれまで。無残な死が一族を待つだけと思っている。

サンサは完璧すぎて愚直とも言える。その純朴さが、ある時点でサーセイを逆なでする。いろいろ見てきたのに世間知らずすぎる。そこでサーセイは自ら教育しようとする。サンサの身に何が起こるか教え、彼女が驚き苦しむ姿を見て、サーセイは屈折した喜びを得る。

①サム、最初の人々の石碑からドラゴングラスをみつける

ドラゴングラス。別名、黒曜石。最初の人々は何かと戦っていた。そして彼らはドラゴングラスを未来へ託した。ドラゴングラスの持つ意味とは?

②クォリンがジョンに託すこととは?

マンスの軍にナイツウォッチを潜り込ませれば千人力だと、クォリンは考えている。そして、相手を信じさせるために必要なことをすればいいとジョンに話す。クォリンの作戦はうまくいくか?

③ジェイミー、ブライエニーの王都帰還の旅

ふたりの道中は一筋縄ではいかない。特にジェイミーにとっては。

④ロブの心情、約束の反故

妹たちは王都でどうなっているかもわからず、弟たちの生死もわからない。母には裏切られ、最も信頼していたシオンにも裏切られた。ロブをとりまく状況は悪いことだらけである。そんななか、タリサだけが唯一の救いと言える。

もちろんロブの頭の中にフレイとの守らなければいけない約束は残っているはずだが…ロブは愛を選んだ。自分の気持ちに正直になったこの決断はロブの人生をどう変えていくのか、注目されたい。

⑤スタニスがダヴォスに寄せる信頼、レンリーとスタニスの確執の背景

ロバートの反乱中、バラシオン家の本拠地ストームズエンドを包囲されていたスタニス。馬を食い、猫、犬、ネズミを食った。食料難に陥る中、密輸業者ダヴォスが侵入に成功し、玉葱、ジャガイモ、塩漬けの牛肉を運びこみスタニスは難を逃れた。戦後、ロバートは末弟レンリーに本拠地の城を与え、スタニスには地形の悪いドラゴンストーン城を与えた。

過去の犯罪の罰として指を失うことになったが、漁師の子として生まれたダヴォスは騎士に叙任された。彼らはお互いが恩人なのであり、スタニスがダヴォスを王の手に任命することも納得がいく。



<インサイド・ストーリーより>

ロブの道義心は、父と母から受け継いだものだ。その母が戦の最中に過ちを犯した。ロブは「道義を守る必要があるのか」と自問する。「忠義心、名誉、尊厳、義務。今やそんなもの誰も持ってないぞ。名誉を重んじた父は首をはねられた」と。ロブは多くにとらわれている。ジェイミーのセリフを彷彿とさせる。「誓いが多すぎればどれかは破ってしまう」と。

ロブは誓いを破ることの意味をとても重く受け止めている。「橋のために結婚を?」と、タリサはためらわずロブに質問する。理想と向き合うようロブに促す。あえて困難を強いる彼女にロブは惹かれる。そしてロブは少し現実的になり、完璧な人間などいないと認識する。そして自分の願望や幸せを大事にすべきだと考える。彼の世界観に亀裂が入り、疑問を持ち始める。

「ブランたちの死」にヤーラは憤る。ヤーラは弟を引っぱたきたい。だが同時に救いたいとも思っている。2人はグレイジョイの生き残りだ。ベイロン公の残った2人の子供は静かな会話を交わす。姉弟のライバル心や敵意や嫉妬の裏には、愛がありだからこそ悲劇的である。ただ憎しみ合うだけなら単純な関係で終わるが、世の中の多くの関係がそうであるように、複雑である。

王がいれば士気が高まるとティリオンは信じている。ロバートは王としては失格だが戦場では偉大で、命を顧みず戦った。サーセイは被害妄想気味だ。「弟は息子ジョフリーを嫌っているので、都合よく戦死させる気だろう」と考える。「すべて弟ティリオンの陰謀だ」と。

サーセイは陰険で他人の不幸を喜ぶ。彼女は弟を弱らせようとする。彼には親友も少ない。彼の情婦を捕らえ弱みを握ったと思ったが、人違いだった。第1章で彼は娼婦のロスにネックレスを与えていた。サーセイは当然ロスが情婦だと考え、人質に取れば、息子も戦死を免れるだろうと安心する。

宣戦布告を受けたティリオンは、姉の狡猾さを思い知る。彼はロスが自分の情婦であるフリをする。無実の女性を傷つけたことで姉に怒り、もし本当にシェイだったらとさらなる怒りを抱く。

①託した孤児2人

以前、ウインターフェルへ陳情に来ていた農民に、ブランは孤児2人を託した。

②ジャクエンによる暗殺が波紋をよぶ

犯人がジャクエンだという考えに、たどり着くことが不可能なタイウィンは兄弟団(ブラザーフット)の関与を疑う。そして、マウンテンこと、グレガー・クレゲインが派遣される。クレゲインというのは、あまり馴染みのない名前だが、マウンテンとハウンドの名字である。

③ザロの金庫

執拗に自分の金庫の存在を主張して己の財力を誇示している。どれほどの財宝が入っているのか、見せてもらいたいものだ。

④デナーリスに信頼を求めるジョラー

自分を信じてくれとジョラーは言う。しかし(今は続けていないとしても)彼がデナーリスのことを王都に密告していたという事実は変わらない。

 

【インサイドストーリーより】

サーセイは追い詰めれらた感覚だ。愛するものが奪われていく。敵は力を増し不安は募るばかり。身から出たサビだが、彼女はティリオンに告白する。憎み合っている相手のはずなのに。彼女は弟を愛さず信用してもいない。なのに打ち明け話の相手は彼以外にいないと気づく。いかに絶望的な状況かわかる。

ティリオンの魅力は人が普段見せない人間性を見抜くところだ。前に「壊れた物に弱い」と言っている。今のサーセイがそうだ。姉は秘密をぶちまけたいができず、弟は慰めたいが方法を知らない。2人に親密でぎこちない空気が流れる。今シーズンのハイライトのひとつだ。

ジェイミーが人殺しなのは忘れられがちだ。シーズン1半ばで人を殺したのが最後だったから、そんな一面は忘れられていた。話には出るけれど、実際のシーンはあまりない。でもそれが真のジェイミーで魅力的な悪漢なのは表向きだ。実は怪物か野獣のように殺しを好んでいて、誰よりうまく殺せる。相手は従兄弟で、何の恨みもない好青年だ。話だって盛り上がる。だが同じ檻に入った瞬間、彼を殺すと決めた。

ジェイミーは自分の思い出話にふけりながらも、相手の若者を殺す隙をずっと狙っている。とても邪悪で残酷なシーンだ。ジェイミー役のニコライの演技が光る。

今のシオンはメチャメチャだ、自分の居場所を得たいという衝動が彼を駆り立てている。彼は最初から常にそれを求めていた。そして葛藤のない新たな自分像を得て、すべての決断を下していく。

シオンは人からの評価を気にする。ネッドやロブは天性の指導者で自信が備わっている。皆が従うと思い人々の前に立ち実際そうなる。シオンの場合は違う。指導者の経験がないから緊張感がある。

ジョフリーは悪者だが、シオンは完全な悪者とは決め付けられない。自分のしたことを見たときの顔から、変わったのは一部だけだと分かる。でもそれがより深い心の闇に彼を追いやっている。

①イグリットが初登場

野人の女戦士イグリットと交戦中にジョンはクォリンたちと離れ離れになってしまう。ジョンは合流することができるのか。それともイグリットの仲間に見つかってしまうのが先か。

イグリットはジョンに大きな影響を与えていく存在になる。

②ミアセラ、ドーンヘ出発

ティリオンが裏切り者を探す作戦を実行したとき、パイセルはサーセイにミアセラをドーンに嫁がせることをばらした。この結果、パイセルは牢に入れられることになった。

そして現実として、ミアセラはドーンのマーテル家の太子に嫁ぐことになった。政略結婚に巻き込まれたミアセラは南の地で幸せに暮らすことができるのか。ラニスター家の抱える因縁に彼女もまた巻き込まれる…のちのシーズンでの再登場に注目したい。

③アリア、エイモリー・リーチに捕まる

アリアたちがハレンホールに連行されたとき、指揮を執っていたのがエイモリー・リーチ。そして、ジェクエンは2人目の暗殺を実行。アリアがジャクエンに告げられる名前は、あと1人だけ。

④ルース・ボルトンの落し子

ラニスター家との戦争から離れるわけにはいかないロブの代わりに、ルース・ボルトンの落し子がウインターフェルの奪還に派遣された。シオンは返り討ちにすることができるのか。

嫡男ではなく、落とし子であるという点を覚えておきたい。

⑤ブランとリコン、ウインターフェルを脱出

シオンにとってスターク家の人間を失ったことは、大きな痛手となる。これでスターク家の兄弟は皆、ウインターフェルから去ることになった。兄弟達が再び、わが城に戻ることはできるのだろうか。

 

【インサイドストーリーより】

子供は経験から多くを学ぶ。世間の仕組みをより深く理解する。「誰かにひどいことをすれば同じ仕打ちが返ってくる」と。ジョフリーはこれまで人民を虐げてきた。そして暴虐に対するあからさまな仕返しを初めて受ける。実際に報復を受け、彼はショックを隠せない。幼い頃からしてきたことが返ってきた。

少年ジョフリーは悟る。自分は決して神ではなかったと。これまでと違い、彼が恐怖する一面が見える。この暴動でジョフリーは民衆に脅威を感じ、なおさら本腰を入れて抑圧しようと考える。普通ならこれに目を覚まし自分を省みる。自分の短所を改善しようとするが、ジョフリーはその逆だ。暴君ぶりを増してしまう。

アリアはもはや、か弱い少女ではない。亡き父親は今も、彼女の人生で大きな存在ではあるが。ネッドは誰よりも名誉を重んじ、自らの掟に従う男だったが、そのせいで大勢の民衆の前で首をはねられた。今や生き残ることを第一の命題とする彼女にとって、名誉は弱みとなるものである。

このシーズンでデナーリスは独立独歩を学ぶ。痛ましい経験を通して。夫や血盟の騎手や部族民たちを失う。これまで彼女は、悲願を達成するため様々な男に頼ってきた。だが、胡椒商人にぞんざいに扱われるエピソードで大いに学ぶ。他人は信用できないと。彼女は結局自分の力に頼るしかない。自分以外誰もできないことを、せねばならない。

ドラゴンたちは今やデナーリスのアイデンティティとなった。それを奪われ彼女は昔の自分に戻った。人は何歳になっても昔の自分によって形成される部分がある。デナーリスはかつて虐げられた臆病な子だった。ドラゴンたちを奪われデナーリスには昔の感情が舞い戻った。ドラゴン誕生後に身に着けた自身が消えてしまい、おびえた少女に戻った。

 

↑このページのトップヘ